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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)257号 判決 1949年6月16日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人篠田一丸上告趣意第一點について。

所論の各書類にそれそれ所論摘示の記載があることは所論のとおりである。しかし原判決以外の所論各書類における所論摘示の記載は原判決に影響を及ぼさないこと明瞭である、そして原判決における所論「被告人は土木請負業關根組の最高幹部であったが」の判示は單に被告人の經歴を示したに過ぎないもので、所論のようにこれを判決の前提又は背景としたものでないこと明白であるから、かような判示をしたからといって、直に原判決が被告人に對してその身分門地によって差別的取扱をしたとはいえない。又所論の東京地方檢察廳檢事鯉沼昌之が昭和二二年一〇月一〇日石崎長次郎を召喚して、その聽取書を作成し第一審裁判所に追送した意圖が假に所論のようであるとしても、原審は右聽取書を證據として引用していないのであるから、右檢察官の措置をもって、原審が被告人を差別的に取扱った證據であるとの所論はあたらない。その他原判決が被告人をその身分門地により差別的取扱をしたと見るべき形跡を発見することができないから、所論は結局名を憲法違反に借りて原判決を非難するにととまるものであって論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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